9月14日から16日にかけて名古屋に行った。
INIのツアー追加公演、名古屋バンテリンドーム。
3日間のうち中日と最終日に入り、アドレナリンを大分泌させてライブを楽しみ、Twitterのお友達と再会して話し尽くして、美味しいものを食べて、行きたかった場所にも行った。
MINIになってから毎年繰り返しているこのルーチン。思い出を少しまとめておこうと思って、久しぶりにはてなを開いた、はずだったんだけど。
なんとなく手に取った朝井リョウの新刊「イン・ザ・メガチャーチ」を読み始めたら、それどころじゃなくなってしまった。
なので今日は、名古屋の記録ではなく「イン・ザ・メガチャーチ」について書く。ネタバレはほんのりあるかも。
とりあえず語りどころが多すぎて書ききれる自信がないけど、これを読んだオタクは大なり小なりちょっと笑ってちょっと刺さると思う。
ここまで前置きが長くなってしまったけど、これは結構大事な前置きなので許してほしい。
朝井リョウは今年で作家デビュー15年らしい。
思えば私が本格的にドルオタになったのもだいたいそのくらい前だと思う。K-POPからハロプロ、ジャニーズ、そして今はINIにハマって、楽しくオタク活動をしてきた。
そして「イン・ザ・メガチャーチ」はかなりドンピシャで私の見ている世界が舞台の小説だった。
日本経済新聞に連載されたこの小説は、推し活経済にまつわる話であり、3人の主人公が登場する。
アイドルグループが所属するレコード会社の社員で、推し活経済を仕掛ける側の47歳の久保田。
推し活に人生を捧げている最中だった35歳で派遣社員の隅川絢子。
やりたい事が見つからず進路に迷っている最中で推しに出会ってしまった、大学生の澄香。
ここで登場するアイドルは、"国民投票型サバ番出身アイドルグループであり、クリエイティブ部分は韓国が資本の事務所が担っている"と描かれている。あまりにもどストレートにINIの所属事務所であるラポネがモデルになっていて、ミーハー心が暴れ出した。
他にも某俳優の自殺に纏わる陰謀論も登場するけど、いずれもSNSで流れてくるのを目にした事がある題材でその生々しさにハラハラした。
もともと朝井リョウの作品は時代を俯瞰するのが上手い印象があったけど「イン・ザ・メガチャーチ」ではそれが顕著だと思った。私が作中描かれている界隈のど真ん中にいるせいかもしれないけど、それにしてもあまりにも解像度が高くて読んでいるとSNSの画面をそのまま紙の上に移したような感覚を味わう。最早インターネットですこの本は。
序盤の推し活特集のくだりがすでに秀逸で、あそこで界隈で日々語られることはざっくり網羅されていると思う。耳障りの良い言葉を並べるプロデューサーの言葉も、渦中にいるオタクのコメントも、仕掛ける起業家の意見も、それに飛ぶ野次も、全部が語り手が入れ替わることもあるものの見たことのある理論たちだった。
にしても言語化がうま過ぎる。
例えば「花道だけを歩こうね」という言葉を誰に向けるでもなく物語の中にスッと置いてあったり(これはサバ番オタクの定番構文で、私も散々使っていた)、リアコオタクのことを"写真一枚で一晩しんどくなれるひとたち"と表現したりするのもそうで、そのテンポの良さと精度の高さに何度も笑ってしまう。決してキリングパートととして羅列している訳ではないのが解像度の高さに繋がっていると思う。
ほかほかの白米が美味しすぎる
— 綾 (@Another001) 2023年9月24日
ほかほかの白米𝑳𝑶𝑽𝑬
ほかほかの白米が生涯の1pick
みなさん投票お願いします!絶対デビューして花道だけを歩こうね!!
そもそもこれは推し活経済の話ではあるものの推し活が搾取する/されるものという眼差しだけで見ていたら絶対に書けない話だと思う。
もちろん分かりやすく搾取されていく場面は登場する。そしてそのターゲットになりえる人のことを"共感能力が高くて自他の境界が曖昧で視野を狭めやすい人"と表現している。切れ味が鋭すぎて読んでいて笑ってしまった。全くもってその通りだと思う。
作中にはそれを心のどこかで自覚しながら視野を狭めて現実逃避していく描写がある。愚かだけどものすごく人間らしい。
そう感じるのは朝井リョウが総じて推し活を冷笑するものとしては描いていないからだと思うし、それが「物語」を求めてしまう人間の真理だからだと思った。
自分の話をすると私は全然搾取しがいのないオタクだと思う。わざわざ飛行機に乗って同じライブに複数回入ることもあるし複数形態のCDもひと通り買うしスミンもMVも沢山聴くし観る。でも特典会の為に積まないし嵩張るという理由でうちわを買わないしひと回りでかくなってしまったVer.2のペンラは鞄に入らないから買わずに初期のままだ。推しのインセンティブになる事は知っているけど、グッズも気に入ったものしか買わない。
かなり自分に都合よく視野を狭めたり広げたりして自分のペースを維持している。
私はアイドルのドキュメンタリー映画に否定的だった。というのもオタク活動をやっていると、わざわざ映画として演出を加えなくてもすでに「物語」は日々の中に存在しているし、ファンダムを含めてそこで起きる全てに私はアイドルの「物語」の楽しみを見出してしまっているからだと思う。
だから私がしているのは推し活じゃなくてオタ活なんだと思うし、財力もモチベも尽きることなく一生オタクなんだと思った。
ちなみに10月31日からINI初のドキュメンタリー映画『INI THE MOVIE 「I Need I」』が公開される。否定的、とか言っていたけどいざ推しの映画が公開されるのが決まると楽しみで仕方がない。
映画館の音響設備で11人に会えるのが嬉し過ぎる。そして絶対に泣く。ムビチケももう買った。
なお、オタクはトレカがないと死ぬとマーケターに思われているのでムビチケもトレカみたいなデザインにされているし、メンバー別ソロ11種と全員が2種ある。当然のことである。
[📢]#INI THE MOVIE『I Need I』
— INI (@official__INI) 2025年9月19日
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